家族

子供から「仕事を辞めたい」と言われたら、あなたならどうしますか?

春、子供が晴れて社会人となり、親の仕事がやっと終わった・・・と、ホッとしている方も多いでしょう。

でも、しばらくして「仕事やめたい・・・」と、子供から相談されたらあなたはどうしますか?

「石の上にも3年、もう少し頑張れば職場や仕事に慣れてくるから頑張りなさい!」と、頑張ればどうにかなるぞとアドバイスしますか?

それとも、「嫌なら辞めてもいいのよ。ほかにも仕事は沢山あるんだから。」と言って、子供に転職を進めますか?

もしかしたら「せっかく頑張って入った会社なのに、どうして辞めたいなんて簡単に言うの!」と言って子供を責めますか?

あなたは、どう子供に声を掛けますか?

今から3年前、私の娘は新卒で入社した会社を”たった4か月”で辞めてしまいました。

その時のことを思い出しながら、今日は書いてみたいと思います。

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憧れの職業!そこは想像していたよりも辛い職場

指輪の交換

私がブライダル関連の仕事をしていたこともあり、高校生の娘はブライダルプランナーになることが夢でした。

専門学校を卒業後、希望するプランナーの仕事についた娘は、毎日それは張り切って会社に行っていました。

ブライダルの仕事は、人の幸せにかかわる仕事ですから、大抵の方は「素敵な仕事ですね」と言ってくれます。

でも、華やかそうな職場も、結婚式という一生に一度という大イベントに失敗は許されないため、かなり神経を使う仕事です。

憧れの仕事についても、耐えられない新人さんも多く、かなり離職率の高い職場でもあります。

朝一番の式がある日なら、日も登らないうちから仕事に向かい、打ち合わせが長引けば終電しか乗れないなんて当たり前の仕事です。

まず体力面で体が付いていかず、体が慣れるころにプランナーとして独り立ちをすれば、ストレスで精神面がやられてしまう人も多いものです。

ただ、憧れだけだけで続けられるような仕事ではありません。

娘は私からいろいろと話を聞いていて、大変な仕事だとわかったうえでブライダルの仕事に飛び込んだのです。

それなのに、入社して”たった4か月”で退職してしまいました。

少しでも睡眠時間が欲しい

疲れてる女性

自宅から職場まで、片道約50分

結婚式やイベントがある日は、早朝に家を出て、終電で帰ってくるのはしかたがありません。

でも、平日も娘が家に帰ってくるのは、ほぼ11時過ぎ。

4時間睡眠時間が確保できればいいほうで、時には2時間ほど眠っては仕事に向かいます。

仕事が休みの日には、スタッフ全員でお花見だ!バーベキューだとワイワイ集まるため、新人が簡単に「今日は行きません!」とは言えません。

いくら若くても、人間関係や新しい職場で緊張している心に、睡眠不足が重なればどんどんと悪いほうに転がっていきます。

睡眠時間を確保するために職場の近くで一人暮らしを始める

仕事は好き、でも眠たくて心に余裕が全然ない・・・

そんな娘は、自宅から通うのをやめ、地下鉄で10分の場所で一人暮らしを始めました。

自宅から通っている時には「眠たい」「身体がつらい」と愚痴をこぼしていた娘。

それが一人暮らしを始めてから、ぴたりと親に愚痴のメールも電話もなくなり「まあ、どうにか頑張ってるのね」と私は思っていました。

職場が近い=残業が当たり前

少しずつ仕事に慣れ、一人で頑張ってる・・・こんな風に思っていたころ、娘からかかってきた電話

「お母さん・・・仕事に行くのが怖い・・・」

いつも、明るく電話してくる娘の声は、小さく弱々しくなってました。

ゆっくりゆっくりと時間をかけて話を聞いてみると、

  • 通勤時間が減った分、残業時間が長くなった
  • たまに夜8時に仕事が終わると、先輩との食事や飲み会に必ず参加しないといけない
  • 自分の仕事が終わっても、上司が仕事中は帰宅が許されない

娘が片道50分を掛けて通勤していた時には、最終電車には必ず乗せないといけないため最悪でも夜の11時には職場を出ることができました。

でも、会社から地下鉄で10分の場所で暮らしだすと、仕事が深夜0時を過ぎることもあたりまえ

仕事が終わって帰ろうと思っても、先輩や上司が仕事をしていれば帰宅することもできず、ただボ~と座って彼らの仕事が終わるのを待たなければいけなかったそうです。

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仕事を辞めさせたくない親・仕事がつらい娘

淋しい夕暮れ

娘の体も心もぐったりしているのに、

「せっかく入社した会社だから、せめて3か月頑張ってみて」

「嫌味を言われても、少しでも早く帰りなさい」

「続けてみれば、だんだんと要領もよくなって、少しずつ楽になるかもしれないよ」

娘が必死に就活をし、やっと決まった職場だけに、親としては踏ん張って残ってほしい気持ちもあり、できるだけ退職させないように説得をしようとします。

娘は娘で、「仕事から逃げ出したい、行きたくない」と思ってはいても、式の打ち合わせにみえるお客様のことを考えると、逃げ出せない・・・でも辛いを繰り返すばかりです。

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呼吸ができない・・・助けて。娘からのSOS

こんなやり取りが何度かありました。

そのたびに娘は、「もう少し頑張ってみる」と結論を出し、私は「どうしても我慢できないときには、また考えよう」と言って電話を切ります。

でも、ある朝、娘から届くLINEの内容に、「3か月頑張ってみなさい」と簡単に言ってしまったことを後悔しました。

「会社まで、どうにかついた」

「電車に乗ると、息が苦しい・・・」

「机に座るとめまいがする」

「お母さん、呼吸ができない・・・助けて」

仕事から逃げていいから!

つぎつぎ流れてくる娘の言葉に、

「今すぐ、そこを出なさい!」

「仕事から逃げていいから!」

そう返信すると、息ができず胸が重く締め付けられながらも娘は会社から飛び出し

「後で、また連絡するから」と言ったまま、スマホの電源を切ってしまった娘

電話もLINEもメールにもつながらなくなりました・・・

会社を辞める・辞めさせる決心をする

雨の日の静かなコーヒータイム

なかなか連絡が取れない娘を心配し、探しに行ってみようと決めた夕方

「お母さん、今のお客さんの仕事終わったら、やっぱり会社を辞める」と、娘から電話がありました。

「お母さん、いいよね。今の仕事やめても、新しい仕事ちゃんと探すから・・・」

そうやって言ってきた娘に対し「誰だって辛いんだから、もう少し頑張ってみなさい」なんて親としては言えません。

「とにかく帰っておいで、生きてればどうにかなるから」としか、親は言ってあげられません。

逃げ出す強さがあるほうがいい

娘が退職を決めた後、会社の先輩からはいろいろ言われたそうです。

そのたびに、息が苦しくなりながらも、どうにか最後の打ち合わせを終え”たった4か月”お世話になった会社を退職しました。

就職難だったころですから、簡単に仕事をやめてしまったことに、友人たちからもいろいろ言われたようです。

あの時「仕事を辞めてもいいよね」と相談してきた娘に、親である私が「もう少し頑張りなさい」「他の人ができてるんだから、甘えてるんじゃないの」と答えていたらどうなったでしょうか。

2015年12月に自分の人生を終わらせてしまった電通の高橋まつりさん

このニュースが繰り返し流されるのを見るたびに、私の心が重くなります。

この同じ年の8月に仕事を辞めた娘は、このニュースをみるたびに「逃げ出したって良かったのに」とつぶやきます。

辛い状況を乗り越えて、続けるのも勇気がいります。

でも、そこから逃げ出すのも心の強さが必要です。

人間関係に疲れてしまった娘は、一人で黙々とできる仕事を選び、明るく笑いながら生きています。

もし、あなたの子供が会社を辞めたいと言ったらどうしますか?

追いつめられて倒れてしまう前に、逃げ出して新しいことに向かう強さを持って!

そう言える親であり続けたいと思います。

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